脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防

脳の血管の病気には大きくわけて、脳出血と脳梗塞があります。どちらも命にかかわったり、麻痺などの重大な障害が残るおそろしい病気です。またその他特殊なタイプの病気もあります。

脳出血は脳の血管が破れて出血し、血腫により圧迫された脳細胞が死んでしまう状態です。くも膜下出血や脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫など、様々な種類があり重症度も違います。

脳梗塞は脳の血管が詰まって、その先に栄養が届かなくなり、脳細胞が死んでしまう病気です。脳の細い血管が動脈硬化で厚くなり血管が詰まるラクナ梗塞、脳の太い血管の壁にコレステロールなどがたまり血管が狭くなりそこに血栓がつまるアテローム血栓性脳梗塞、心臓にできた血栓が血流に乗って脳に流れ、脳の血管に詰まる心原性脳塞栓症、などがあります。

脳卒中が発症すると死んでしまった脳細胞の機能が失われるため、様々な後遺症が残る可能性があります。発症早期ではリハビリテーションでかなり回復することが可能です。

脳卒中の既往のある方は再発のおそれがあるため、再発を防ぐための治療を行うことが重要です。

脳卒中再発予防では、①原因となる病気の管理、②生活習慣の改善、③薬物療法が重要です。

①原因となる病気の管理

高血圧

脳卒中を防ぐのに最も重要なのは血圧管理です。上の血圧が140mmHgを超えると脳卒中が起こりやすくなることがわかっています。塩分のとりすぎに注意し適切な生活習慣を整えることが重要です。

高脂血症

コレステロールや中性脂肪が血液中に多い状態のことです。放置すると血管の壁にコレステロールがたまって動脈硬化がすすみます。脂身をひかえるなど食生活の工夫が必要です。

糖尿病

糖尿病は軽症のうちから動脈硬化をひきおこし、脳卒中や心筋梗塞の原因となります。
食べ過ぎに注意し、バランスのよい食事をとることが大切です。

心房細動

心房細動は不整脈の一種のことです。心房細動という不整脈があると、心臓の中の血液がよどんで、血のかたまりができやすくなります。心臓でできた血のかたまりが脳の血管で詰まると脳梗塞になります。不整脈のコントロールや血を固まりにくくする薬を飲んで再発の危険性を減らすことが重要です。

②生活習慣の改善

栄養バランスの良い食事をとる

1日の適正なカロリー量をまもることが大事です。身長や活動度によって必要なカロリー量がきまってきます。過度なカロリー摂取は肥満や生活習慣病の原因となります。過度な糖分や炭水化物の摂取は血糖値の上昇につながります。糖質の適切な制限が必要です。

塩分制限をおこなう

食塩は1日8g未満が目標です。高血圧のある方は6g未満といわれています。漬物や梅干し、ラーメンの汁など塩分の高い食品を避けたり、量を少なくするなど工夫が必要です。

過度な飲酒をしない

過度な飲酒も動脈硬化につながるといわれています。また飲酒の際には塩分の高い食事をとりがちです。適量のアルコール摂取につとめましょう。

禁煙

喫煙は各種の癌の原因となるだけでなく、動脈硬化を進行させ脳卒中や心筋梗塞のリスクをあげます。脳卒中の既往のある方や生活習慣病の方はぜひ禁煙しましょう。

適度な運動をおこなう

運動によりエネルギーを消費するだけでなく、生活習慣病の予防や改善につながります。
ウォーキングなどの軽い運動でも十分な効果が得られますので、散歩からはじめましょう。まだ体のあたたまっていない早朝の運動は体に負担をかけますので日中の運動を行いましょう。

入浴時などの注意

特に冬場では、お風呂やトイレ、寝室など温度変化が生じる場合が多く、それにより血圧が大きく変動し脳卒中の原因となることがあります。
寒い場所には暖房器具を置くなど工夫をしましょう。
また、高温のお風呂や寒い脱衣所は大きな血圧変動の原因となります。脱衣所を暖めておく、お風呂はぬるめで短時間にする、半身浴にする、シャワーにする、など工夫が大事です。

③薬物療法

脳卒中の再発を予防するためには、高血圧、脂質異常症、糖尿病などのコントロールが重要なため、上記のような生活習慣の努力で改善しない場合には投薬によるしっかりとしたコントロールが大事です。

また脳梗塞では、再発を予防するために血をさらさらにし、血栓(血のかたまり)をできにくくするお薬を投与します。すべての脳梗塞を防ぐことはできませんが、一定程度脳梗塞の再発のリスクを下げるといわれています。
抗血小板薬、抗凝固薬といったお薬がありますが、脳梗塞のタイプによってどの薬を投薬するか決定されます。

最後に不幸にも脳卒中が再発してしまった場合ですが、明らかな麻痺の進行がある、など明らかな脳卒中の再発が疑われる場合には救急治療が重要です。救急車をよび早急な治療を受けてください。

急な進行はないが、心配な場合にはMRIなどの画像評価が有効です。MRIやCTの画像検査ができる施設のご紹介をしますのでご相談ください。

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